エスメラルダはなぜフィーバスを選んだのか?:ディズニー映画『ノートルダムの鐘』感想

ノートルダムの鐘:エスメラルダ 映画

※この記事は映画『ノートルダムの鐘』のネタバレを含みます

ディズニー映画『ノートルダムの鐘』を初めて観た時、ヒロインのエスメラルダと最終的に結ばれるのが主人公のカジモドではなく、フィーバス隊長であることにとてもショックを受けました。
「ディズニーの主人公が恋敵に敗れることなんてあるのか!」という衝撃と、「結局、顔なのか?」という疑問。
なぜエスメラルダはフィーバスを選んだのか?自分なりに考えてみることにしました。

ディズニーのヒロインは「願い」を持つ

『ノートルダムの鐘』の主人公はカジモドですが、ここではヒロインのエスメラルダに焦点を当てて、ディズニー映画に出てくるヒロイン達、主にプリンセスと比較してみます。

ディズニー映画では、プリンセスは物語の冒頭で必ず、自分の「願い」や「夢」を歌います。いわゆる”I want song”と言われるもの。
そして、その「プリンセスの夢」を叶えるのがプリンスの役割なのです。

ディズニー映画のプリンセスと”I want song”、そしてプリンスの行動をいくつか見てみましょう。

  • 白雪姫『いつか王子様が』

いつの日にか王子様がきてくれる
その日を私は夢に見る

プリンスは白雪姫にキスをして目覚めさせ、結ばれる

  • ラプンツェル『自由への扉』

外の世界を見に行きたいの


フリン(プリンス)はラプンツェルが塔から出て夢を叶える手助けをする

  • シンデレラ『夢はひそかに』

例え辛い時も信じていれば夢は叶うもの


チャーミング王子はシンデレラと結婚し、継母から解放させる

このように、プリンセス自身が幸せになるための夢、望みを叶えるのがプリンスだという構図ですね。

では、エスメラルダの場合はどうか?
実は、エスメラルダは自分が幸せになることを夢見ていないのです。

ゴッド・ヘルプでエスメラルダは何を願ったか?

エスメラルダの”I want song”は『ゴッド・ヘルプ』という歌。
そこで、エスメラルダは次のように歌っています。

あたしは大丈夫ひとりで
でも不幸な人がこの世にいる
助けてあげて踏みにじられた
その人たちを みな神の子

なんと、エスメラルダは「私は何も望みません、だから自分より不幸な人を助けて下さい」と願っているんです。
他のディズニーヒロインのように、自分が幸せになることを夢みていません。これって、かなり特殊なヒロインですよね。

歌の中でエスメラルダがいう「不幸な人」の中には、カジモドも含まれています。
というのも、ちょうどこの「不幸な人がたくさんいる」と歌うシーンで、画面にカジモドが現れ、彼が冒頭で歌う「僕の願い」のフレーズが流れるという演出になっているんです。

この歌から分かるように、エスメラルダにとってカジモドは「助けてあげたい人」 であって、「夢をかなえてくれる人」ではありません。

では、エスメラルダの夢をかなえるプリンスの役は誰なのか?
そう、それこそがフィーバスなのです。

フィーバスがしたこととは?

では、具体的にフィーバスは何をしたのか?
映画で最も分かりやすく、フィーバスがエスメラルダの願いを叶えているシーンがあります。
それは、フロローがパリ中を巻き込み、エスメラルダを捕らえるためにジプシー狩りを行うシーン。

フロローは見せしめのために罪のない人たちの家に火をつけるようフィーバス隊長に命令します。その時、フィーバスは命令に背き、火が放たれた家に飛び込んで、自分を犠牲にしてでも人々を救い出したのでした。
この瞬間を、エスメラルダは遠くでしっかりと見ていたんですね。

ジプシー狩りが行われても、エスメラルダは一人でなんとか逃げおおせていました。
でも、ジプシーの中には捕らえられてしまう人、傷つけられてしまう人もいるわけです。そんな人たちを、身を呈して助けた人物こそが、フィーバス。だからこそエスメラルダは彼に惹かれたのでしょう。

ここのシーンが「ゴッド・ヘルプ」の歌詞、「私は大丈夫ひとりで でも不幸な人がこの世にいる 助けてあげて」の部分に繋がっていると感じました。

フィーバスは、エスメラルダにとって願いを叶えてくれた大切な人。
決してイケメンだから惚れたってわけではありません(多分)。

カジモドがしたことは?

それに対して、カジモドがしたことは一体なにか?
実はカジモドは、「エスメラルダを助ける」という非常に重要かつプリンス的な役割を果たしました。

それは、物語のクライマックスで、火あぶりの刑に処されたエスメラルダをカジモドが救い出すシーンに表れています。
本来ならば、「ピンチのヒロインを救い出す」ことこそがヒロインと結ばれる最大の条件ではないでしょうか。

でも、ノートルダムの鐘においては違います。なぜなら、エスメラルダは「自分が救われること」を一番に望んでいないから。

まとめるとこうなります。

・エスメラルダの願いは「不幸な人を救ってください」

・エスメラルダにとって、カジモドは助けてあげたい存在

・エスメラルダは勇気と優しさをカジモドに与える

・フィーバスは弱きものを救う

・カジモドはエスメラルダを救う

・エスメラルダは、フィーバスと結ばれる

エスメラルダを助けたのはカジモドなのに、エスメラルダの願いを叶え、心を救ったのはフィーバスだったということですね。
カジモドがんばったのに…切ない。

ノートルダムの鐘という作品や、エスメラルダというキャラクターは、ディズニー映画の王道を少し外れています。
そのため、最初は「主人公がヒロインと結ばれない」という結末にちょっとモヤモヤ…。
でも、エスメラルダの願いを丁寧に読み解いてみると、結末に納得すると同時に、エスメラルダの魅力に気づいたのでした。

もし、まだノートルダムの鐘を見たことがない方や、子供の時にみたっきりで忘れている方は、大人になった今だからこそ鑑賞してみてはいかがでしょうか。

プリンセスとは一味ちがった、エスメラルダの強さと優しさに気付くことができるはずです。